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岡山県倉敷市内の海底シールドトンネル水没災害の発生原因

岡山県倉敷市内の
海底シールドトンネル水没災害の発生原因


 平成24年2月7日に岡山県倉敷市で発生した、海底シールドトンネルのシールド工法による施工中に、トンネル内に海水が流入したことによって作業員6人が被災、うち5人が死亡するという重篤な崩壊水没災害を受けて「シールドトンネルの施工に係る安全対策検討会」が設置された。
 
 検討会は,前記海底シールドトンネル水没事故の発生原因を特定する等の内容を含む「報告書」をまとめ、厚労省が2016.6.22、これを公表している。

 詳細は、以下のURLから直接参照することができます。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000128239.html

 ここでは、同報告書(及び報告書概要)の中から、災害発生状況と災害発生メカニズム、災害発生原因にかかる箇所を抜粋して紹介します。



【災害発生状況】

 工事

 JX日鉱日石エネルギーA工場、B工場間の水島港を横断する配管施設用トンネル(横坑)を海底に構築するもの。トンネルは、B工場敷地内に構築した立坑から泥土圧シールド工法により掘削するもの。


 災害時の状況

 災害発生までに立坑から約160m 掘進し、109 リングまでが組立てられていた。
 海底トンネル事故


 当日は110 から114 リングの掘進及び113 リングまでの組立てを行う予定であった。午前7 時20 分頃から作業を開始し、午前11 時45 分までに111 リングの組立て及び112 リングの掘進を終了した。
 
 正午前頃、トンネル内でドーンと音がし、警報装置から電子音が鳴り始めた。
 
 この時点で出水が始まったものと思われる。

 一次下請の切羽作業員A、シールドマシンオペレーターBが切羽にいたが、Bは当時地上にいた一次下請の職長Cを呼びに行き、Cとともに切羽に戻った。
 
 午後0 時20 分頃、トンネル内で二度大きな音がし、大規模な出水が始まった。
 
 Cは立坑下に向かって「逃げろ」と叫んだが、二次下請のバッテリーロコ(蓄電池式軌道車)オペレーターDは切羽方向に向かっていった。立坑下には、他に二次下請の切羽作業員E、一次下請の立坑下作業員Fがいた。Fは階段で地上に避難したが、途中で海水に押し上げられるような形で立坑の入り口付近まで流され、地上に脱出した。
 
 立坑付近は泥水で水浸しになり、中央管理室は床上まで浸水した。
 
 一次下請のA、B、C、二次下請のD、Eの5名が行方不明となり、後日遺体で発見された。



【災害発生メカニズム】

① 26リングにおいて掘進線が設計計画線から切羽に向かって左に約200mmずれていることが確認された(立坑及び横坑の測量結果より)。

② 85リングの掘進中又は組立て時に、裏込め注入材がシールドマシンのテール部を通過し坑内に漏れ出し、テールブラシ内で裏込め注入材が固結し始めた。そのため、85リング以降、テールクリアランスの値がほぼ一定値となった(掘進管理システムデータより)。

③ 94リング付近から、セグメントの線形を設計計画線に戻すため、シールドマシンを切羽に向かってさらに右方向に向けるが、セグメントは逆に左方向に向かい、シールドマシンとセグメントの方向に齟齬が発生した。そのため、裏込め注入材が固結したテールブラシとセグメントの競りが発生した。
セグメント崩壊
 ( ↑ クリックすると拡大表示できます)

112リングのB2セグメントを組立てようと111リングのKセグメントを支持していたジャッキを引き抜いたところ、シールドマシン前方からの切羽圧によってシールドマシンがテールを下げ、セグメント上部との競りが発生した(掘進管理システムのデータより)。

111リングのKセグメントが切羽側に抜け出そうとし、リング継手が損傷し、111リングのB1、B2セグメントのリング継手(110リング側)の一部がせん断した。直後に111リングのK、B1、B2が坑内にわずかに垂れ下がった(リング継手の分析からの推定)。

坑内への出水が始まり、切羽圧が低下し始めた(掘進管理システムのデータから)。

⑦ 出水が継続したことにより、地盤の緩みを引き起こし、110リング及び111リングの上部に作用する荷重が増大した(推定)。

110リング、111リングの変形が進行し、両リングが崩壊し、大規模出水に至った(セグメントの破損状況の調査、個別要素
法によりセグメント崩壊メカニズムをシミュレーションした結果から。図参照)。



【災害発生原因】

 本件災害発生に至った要因、原因及びその背景は、設計・計画から施工までに渡る次の事項が挙げられる。



① 設計・計画時

ア シールドマシン


a 土被りの浅い海底下のトンネル工事において、テールシールが2 段であったこと

 施工途中にテール部から漏水があったことが報告されており、テールシールが2段であったことが、テール部の止水性を低下させる要因の一つとなったと考えられる。

b シールドマシンの全長が短く、テール部が短い仕様であったこと

 このため、セグメントが幅広であったことも加わってシールドマシンのテール部に対するセグメントのかかり代が短くなるとともに、KセグメントとBセグメントのテーパー部分の角度も比較的大きくなり、本災害を誘発する要因の一つとなったと考えられる。


イ セグメント

a セグメントの厚さが薄く、リング継手のコンクリートの被りが薄かったこと

 このため、被りが薄い方向へ力が加わった際にリング継手のボルトインサート周囲のコンクリートがはく離することにより容易に継手部が破壊した。また、ボルトインサートが主筋と主筋の間に設置されていなかったこともボルトインサートの変形、ボルトインサート周囲のコンクリート破壊等を助長したものと考えられる。

b セグメントが弧長大、幅広であったこと

 このため、セグメント組立て時にジャッキを引き抜かなければならない本数が増え、セグメントの抜け出しや垂れ下がりが発生し、割れ、欠けの要因ともなったこと。

c セグメント継手をボルト等による堅固な構造とせず、樹脂パイプによりガイドさせた突合せ構造としたこと

d セグメントの寸法が薄肉、弧長大、幅広であり、加えて、セグメント継手も樹脂パイプによりガイドさせた突合せ構造であるにもかかわらず、Kセグメントの抜け出しの可能性について十分に検討していなかったこと
 なお、Kセグメントの抜け出しについては、土木学会発行の『2006 年制定 トンネル標準示方書 シールド工法・同解説』等の基準類(以下、「基準類」という。)に明確な規定はないが、標準的なセグメントの寸法を逸脱する場合には、『耐久性や施工時荷重への対応等についても慎重に検討する必要がある』とされている。



② シールド掘進

ア シールド掘進


a 線形管理上の重要なデータである ⅰ) テールクリアランス、 ⅱ) 測量データ(セグメント位置)、ⅲ) シールドマシンの位置偏差(掘進管理システムのデータ)の値が異なる傾向を示していたにもかかわらず十分な照査を行っていなかったこと
  テールブラシにおいて裏込め注入材等が固着したためテールクリアランスのデータはほとんど変化がなく、掘進管理システムのデータは右に向かっていたが、測量データが左に向かっていたため、設計計画線に戻そうとよりシールドマシンを切羽に向かって右に向けていた。また、シールドマシンよりもセグメントは相対的に上方にずれていたが、シールドマシンを上に向けようとしたため、結果としてシールドマシンテールブラシがセグメント上部と競ったこと。これにより、Kセグメントが抜け出すことを誘発したこと

b テールグリスを油圧ポンプにより手動で注入していたが、注入量及び注入圧を管理していなかったこと

c テールグリスに、裏込め注入材と配合が類似した止水材を用いたことで、裏込め注入材がテールシール内に入り込んできた際、止水材と裏込め注入材が固結してテールブラシ内で固化した可能性があること


イ セグメントの組立て

a 計測データに基づいた線形管理を適切に行っていなかった可能性があり、それに加えて、裏込め注入材がテールブラシに固着したことにより、シールドマシンのテール部とセグメントとのクリアランスが減少し、セグメントの組立精度に影響を与えたこと。
 このため、85 リング以降、セグメントが設計計画線よりも左方向にさらにずれており真円に組めていなかった可能性がある。セグメントの割れ、欠け、垂れ下がり等の1 つの要因となった可能性も考えられる

b 85 リング以降、セグメントとシールドマシンの位置偏差の値が異なる傾向を示していたにもかかわらず、テーパーセグメントを挿入しなかったこと
 このため、組み上げられたセグメントが切羽に向かって左方向に向かったままとなり、右に向けたシールドマシンのテール部との競りが発生したこと。
 なお、予め用意していたテーパーセグメントは20 リングで、製造したリング全数の557 に占める割合は3.6%となっており、基準類において示されている「直線区間に使用するリング数の3%程度」を上回っていた。
 しかし、約87m 掘進時点(62 リング)ですでに8 リングを使用していたことから、できるだけ使用しないようにしていた可能性がある。

c 112 リングのB2セグメントを挿入するため、上部のジャッキ9 本(26本中)を引き抜いたことで、シールドマシンがテール部を下げるように変位したこと
 このため、シールドマシンのテール部と組み上げられた上部のセグメントとの競りが発生したこと。これにより、Kセグメントが抜け出すことを誘発したこと。

d Kセグメントの挿入を容易にするため、セグメントに水をかけ、また潤滑剤をシール材に塗布していたこと
 これによりセグメント同士の摩擦力が減少し、セグメント間が樹脂パイプのガイドだけだったため、Kセグメントが抜け出したこと。これが本災害の契機となったものである。

e  セグメントの組立時又は組立後に頻繁にセグメントの割れ、欠け等が発生していたが、逐次の補修に留まり、その原因を検討・究明した上で、対応していなかったこと


ウ 裏込め注入

 3リング後方(109 リング)又は4リング後方(108 リング)から裏込め注入材を充填していた。そのため、1~2リング又は1~3リング後方(111~110 又は111~109 リング)のリングは、水圧のみが作用する状態となり、地盤反力が得られず周囲から拘束されていない不安定な状態となっていたと考えられること。
 この浮力により、シールドマシンのテール部と組み上げられた上部のセグメントとの競りが発生していたと考えられること。


エ 避難訓練及び退避

a 避難訓練を適切な時期に実施していなかったこと。

b 出水が始まった時点で、作業員を直ちに退避させなかったこと。


③ 設計・計画時

ア 線形管理が適切に行われていない場合等にかかる外力(基準類では検討されていない外力)に耐える余裕代がなかったこと。

イ 設計・施工の安全性について、発注者が請負者以外の第3者のシールドトンネルの専門機関に客観的な確認を求めていなかったこと。




[編注、コメント]

平成24年2月の災害であったから、報告書公表まで4年5月を経過している。

当該災害が、重大災害であったことももちろんであるが、同時に、シールドトンネル工事の関係者にとって、本件災害の特異な内容からして、必ずや発生原因が特定され、明確な再発防止対策が確立されることによって、安心して同種工事に望むことができることを切望していた。

今回の検討会「報告書」を読んでみると、このような経過で本件災害は発生したのか、という点について報告書なりに「なるほど」と思える理由を示して結果を導いているように思う。
ぜひ、一読をお奨めしたい。



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染料工場で5人膀胱がん 原因物質はo-トルイジンか

染料工場で5人膀胱がん
原因物質はo-トルイジンか

 (以下は、厚労省の発表と各報道による)

 厚生労働省は2015.12.18日、染料や顔料の原料を製造する北陸地方の40人規模の工場で、40~50代の男性4人と退職した1人が、昨年から今年にかけ相次いで膀胱がんを発症したと発表した。

 製造工程で使った発がん性があるとされる化学物質「オルト―トルイジン」が原因の可能性がある。
 5人は同工場に7~24年の勤務歴がある。
 同工場では発がん性が指摘される液体のオルト―トルイジンを含む5種類の芳香族アミンを原料として扱っている。5人は原料を混ぜたり、乾燥させたりする作業に携わっていた。厚生労働省によると、オルト―トルイジンを取り扱っている工場は、全国に約40カ所あるという。


 o-トルイジンの危険有害情報と安全対策

 ○ 安全衛生情報センター提供情報
 ○ o-トルイジン情報
 
 o-トルイジン

 (危険有害性情報)以下はその一部
 発がんのおそれ 
 中枢神経系、血液系、腎臓、膀胱の障害
 長期又は反復ばく露による血液系の障害

 (安全対策)以下はその一部
 個人用保護具や換気装置を使用し、ばく露を避けること。
 保護手袋、保護眼鏡、保護面を着用すること。
 屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
 ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
 取扱い後はよく手を洗うこと。



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